"「不景気で売り上げが伸びたのは、収入が減ったり失業した男性のパイプカット手術くらい。ほとんどの病院が負債を抱えて、倒産しています。"
堤未果『ルポ貧困大陸アメリカⅡ』
@1 year ago with 1 note
"青空の背景にそびえる巨大な円形の鉄の塊を見上げながら、彼はフレームに配置されたゴンドラの数をかぞえてみた。ゴンドラは全部で四十六基だった。四十六?四十五であれば円の三百六十度を割り切ることもできるだろうが、ひとつ多い四十六というのはいったいどういう理由なのだろう?彼はもう一度数えなおしてみたが、やはり間違いない、ゴンドラは四十六基だった。ならば俺はその最後の、四十六番目のゴンドラに乗ってみたいものだ、きっとそこには幸運があるに違いない、しかしそれはどうやって見分けることができるのか?確率の問題だろうか?母数の問題だろうか?いや違う、たかが観覧車のゴンドラに乗るかだって、それは予め定められた未来なのではないか?"
磯崎憲一郎『終の住処』
@1 year ago
" 自分にぐったり疲れた私は、きょう分別のあることをせめてひとつはしようと、意を決して床屋に行く。頭がくりひろげる埒もない考えから逃れるすべがないので、きょう二度目の外出をするのだ。だけど、いつもかも気を逸らした人生を送れるわけじゃないぞ、と小声でひとりつぶやく。〈消えたい病〉だけじゃなく、おまえはなにか別の情熱を持たなくちゃならんだろうが。といいつつ、自分への毒舌を聞いているのはなかなか心地がいい。その毒舌にふくまれている甘い毒が、罵られている自分をその反対にひっくり返すから。さらに毒舌に隠れている誇張が、自分を同時に無罪放免にする。"
ヴィルヘルム・ゲナツィーノ『そんな日の雨傘に』
@1 year ago
" まだ種付けはしていないのだが、獣医のハワード・パドウィー博士によると、彼女は想像妊娠を経験中らしく、そのゴム製のアイスクリーム・コーンを子犬と信じこんでいる。彼女はそれをクロゼットの中へ隠す。それをくわえて、メゾネットの階段を昇り降りする。乳の分泌さえはじまった。いま、それを止める注射を受けているところだ。
天はこの犬をなんと激しくも真剣にならせたのだろうか――たかがゴム製のソフトクリーム、茶色のゴムのコーンとピンク色のゴムのアイスクリームでしかないものに。それとおなじく、このわたしも、なんとばかばかしいガラクタへの執着を演じつづけてきたのだろうかと、思わずにはいられない。まあ、それはどうでもよい。この世にはわたしたちの存在理由はない――わたしたちがそれを発明しないかぎりは。それだけはたしかだ。"
カート・ヴォネガット『ジェイルバード』
@1 year ago
"わたしはトラウトに生きる価値もないような人生を与えたが、それと同時に、生きつづける鉄の意志も与えておいた。これは地球という惑星ではごくありふれた組み合わせである。"
カート・ヴォネガット・ジュニア『チャンピオンたちの朝食』
@1 year ago