"ある日、家が忽然と消えてなくなったり、改築されたりすることがある。見る影もなく変ってしまい、腹が立って、私はそれっきりもう眼もくれなくなったりする。きょうはそういう日だろうか――そうではなさそうだが。もしそういう日だとしたら、私はまたあれを感じているはずだろう。私みたいな人間は、古家みたいに消えてなくなるか、改築されよ、と告げられてしかるべきだという感じ。この感じは、しばしば陥るある気分と結びついている。つまり、自分は、自分の許可なくこの世にいる、という気分。正確に言うと、私はずっと、誰かが、きみはここにいたいかい、と訊いてくれるのを待ち続けている。もしも、たとえばきょうの午後、この許可を私が出せたらどんなにいいだろう。私が誰に出すのかはさっぱりわからないが、この場合それはどうでもいい。"

ヴィルヘルム・ゲナツィーノ『そんな日の雨傘に』
@1 year ago