"青空の背景にそびえる巨大な円形の鉄の塊を見上げながら、彼はフレームに配置されたゴンドラの数をかぞえてみた。ゴンドラは全部で四十六基だった。四十六?四十五であれば円の三百六十度を割り切ることもできるだろうが、ひとつ多い四十六というのはいったいどういう理由なのだろう?彼はもう一度数えなおしてみたが、やはり間違いない、ゴンドラは四十六基だった。ならば俺はその最後の、四十六番目のゴンドラに乗ってみたいものだ、きっとそこには幸運があるに違いない、しかしそれはどうやって見分けることができるのか?確率の問題だろうか?母数の問題だろうか?いや違う、たかが観覧車のゴンドラに乗るかだって、それは予め定められた未来なのではないか?"
磯崎憲一郎『終の住処』
@1 year ago